今回ご紹介するのは Doepfer の新世代モジュラーシンセ・スターターシステム「Doepfer A-100 SS-1 シリーズ」です!
スターターシステム、という事はこれからモジュラーシンセを始めたい方にオススメできるシステムです。
シンセサイザーに定番の機能を一通り搭載しており、リッチなモノシンセとして使用できます。
スターターと言ってもあなどる事なかれ!モジュラーシンセのケースの標準的なサイズである84HPという限られたスペースをフルに活用し、モジュラーシンセの楽しさを十分堪能できるシステムです。20年以上の歴史を誇る Doepfer モジュールの中でも、比較的新しい省スペースで機能的なモジュールが多くセレクトされており、10年前の Doepfer モジュールのラインナップでは実現できなかったシステムなんですね。
ラインナップは9種類!用途に応じてお好きなケースを選べる!
- A-100 SS-1-LC3
- A-100 SS-1-LC3V
- A-100 SS-1-LC6
- A-100 SS-1-LC6V
- A-100 SS-1-G6
- A-100 SS-1-P6
- A-100 SS-1-LC9
- A-100 SS-1-LC9V
- A-100 SS-1-P9
A-100 SS-1 シリーズは全部でなんと9種類のラインナップ!構成するモジュールは全て同じで、ご予算や用途に応じてケースを選ぶ事ができます。
とにかく安く済ませたい!という方は LC1 か LC1V でも良いのですが、長年モジュラーを販売している経験上「使っているうちに絶対にモジュールを追加したくなる!」事はほぼ間違いありません。なのでモジュールを追加できるブランク・スペースがある大きめのケースのシステムをオススメします。
別に高いものを売りたいという訳ではありません!本当に!これは商売っ気なしです!あとでケースを追加したり買い替えたりする事を考えると、最初から大きめのケースにしておいた方が将来的にお客様のご負担も少なくなります。浮いたお金でまたモジュールを買い足せますし!
システムごとの名前が分かりづらいので解説しますね。「SS-1」というのはそのままスターターシステムの1番という意味で、その後に続く2文字から4文字はケースの名前です。
LC = ローコストケース
そのままローコスト、安い!廉価!という意味です。といってもしっかりと木の板で組まれたケースなので使う上で何も心配はいりません。特にスタジオやライヴで持ち出したりする予定が無ければこれで十分です。最後が数字で終わっているのは木地がそのまま出ているモデルで一番廉価です。最後にVが付いてるのがヴィンテージという意味で、普通のLCケースに昔のヴィンテージシンセの様なレザー風のシートを貼って仕上げているモデルです。この辺はお好みで!
G = ラックマウントケース
19インチラックケースに収める事ができるモデルです。他のラック機材と一緒にラックケースへ収める事ができるのでラック機材が多い方に便利です。
P = ポータブル
ケースの角や縁が金属でガードされた頑丈なモデルで、フタをしてハンドルで持って持ち運びができるポータブルケースです。スタジオやライヴで持ち出す機会が多い方におすすめです。
機能的なモジュールで構成された SS-1 モジュールたち!
それではここから SS-1 を構成するモジュールたちを左から順番に紹介していきましょう!細かく紹介すると時間がかかってしまうので簡潔にまとめてあります。
A-190-4 USB/MIDI to CV/Gate/Sync Interface
USB ケーブルか MIDI ケーブルで入力した MIDI 信号を、モジュラーシンセが使う信号 CV、Gate、Clock に変換して出力してくれるモジュールです。
ちなみに CV は A-110-2 Basic VCO の CV In へ、Gate は A-140 ADSR の Gate In へケースの中のバスボード経由で繋がっているので、パッチケーブルでパッチする必要はありません。
A-160-1 Clock Divider
入力したクロックを分割して出力してくれるモジュールです。
例えば16分音符のクロックを入力すると、/2からは8分音符を、/4からは4分音符を…といった感じで出力します。
簡易的なシーケンサーとして使う事が多いですね。
A-110-2 Basic VCO
音を生成するオシレーター、VCO はボルテージ・コントロールド・オシレーターの略で、「電圧で制御する発振器」という意味です。
A-110-2 は上昇ノコギリ波、矩形波(パルス幅コントロールを使用するとパルス波)、三角波のベーシックな3種類の波形を出力できます。
リニアFM、エキスポネンシャルFM、ソフトシンク、ハードシンクの入力が付いているので、別のオシレーターなどを入力して音を大胆に変化させる事が可能です。
ベーシックと言いながら必要最低限以上の機能を搭載した超スグレモノです。
A-118 Noise / Random
「ザー」「ガー」といった感じのノイズサウンド(アナログ地上波テレビの放送終了後の音!と言うのはもう古いでしょうか…)と、ランダムなCVを出力します。
ノイズもシンセで音を作る際に非常に大切な要素で、音階のある楽器的な音を作る際はジャリジャリした質感を足すのに使用したり、パーカションサウンドを作る際は必須ともいえる音です。
ランダムCVは偶発性を取り入れるのに必要な要素で、電子楽器で作るサウンドをより表情豊かにするために必要不可欠な物です。
A-148 Dual S&H /T&H
S&H はサンプル・アンド・ホールド、T&H はトラック・アンド・ホールドの略です。
シンセサイザーにはよく LFO の波形の一種として搭載されている事が多いですが、本当は LFO とはちょっと違います。
詳しい仕組みを解説すると記事をまるまる一つ使ってしまうので割愛しますが、最初は「ピロピロしたロボットやSFやコンピューターっぽい音が作れるモジュール」と覚えておけばOKです。
A-138c Polarizing Mixer
サウンドやCVをミックスして出力できるミキサーですが、普通のミキサーとはちょっと違う「ポラライジング」ミキサーです
ポラライジングというのは「分極化」という意味で、入力した信号を正相または逆相にして出力できます。
普通のミキサーだとツマミを左に回し切ると0で、右に回すにつれて値が大きくなります。このミキサーの場合はツマミを時計の12時方向で0、0から右に回すと正相(プラス)、0から左に回すと逆相(マイナス)になります。逆走にすると波形がひっくり返ります。
チャンネルの入力に何も接続しないと、In1 に一定の電圧が接続され、一定の電圧を出力する事ができます。大変地味ですがあると非常に便利な機能なのでありがたいです。
A-106-5 12dB SEM Filter
ヴィンテージシンセの名器、Oberheim SEM のフィルター回路を再現した -12dB フィルターです。フィルターは入力した音の倍音を削ったり、一部の周波数帯域を強調したりして音色を決めるとても重要なモジュールです。パンチがありつつも変なクセがなく、楽器的なサウンドを作る際に非常に優秀なフィルターです。もちろん変態的な音を作るのにもOK。
A-132-3 Dual lin/exp. VCA
オーディオの音量やCVの電圧の強さをコントロールするのがVCAです。リニア/エキスポネンシャル特性を切り替える事ができる VCA を2つ搭載しています。
一般的にリニアはCV用、エキスポネンシャルはオーディオ用という風に使い分けされています。
A-180-2 Multiples 2HP
全モジュラーユーザー必携ともいえる、入力した信号を複数に分割する事ができるのがこのマルチプルです。1つの信号を3つに分割する回路を2つ搭載しています。
例えば1つのLFOでオシレーターのピッチとフィルターのフリーケンシーをコントロールしたい!という時などに使います。
A-180-1 という4HPサイズの物もありますが、A-100 SS-1 に搭載されているのは半分の2HPサイズの省スペースタイプです。
A-140 ADSR
音色に時間的な変化をつける「エンベロープ」モジュールです。
Attack、Decay、Sustain、Release というオーソドックスな4ステージのADSRタイプです。
全体的な時間の変化の範囲を3段階で切り替える事ができるので、変化が短めの楽器的なサウンドから、長い時間をかけて緩やかに変化するドローンサウンドまで使えます。
A-147-2 VCDLFO
こちらも音に時間的な変化をつける「LFO」モジュールです。
エンベロープと違うのは、エンベロープがゲートを入れて1回動作するのに対し、LFOは一つの波形が永遠にループしているんですね。
楽器的な音色を作る場合はビブラートやトレモロ効果をつけるのに使ったり、過激なノイズサウンドを作る時にも使うシンセサイザーに必携の機能です。
この最新バージョンの A-147-2 には1ステージのエンベロープと VCA が内蔵されており、「トリガーしてから徐々に掛かり方が強くなるLFO」をコレ一台で作れる素晴らしい1台です。
A-171-2 VC Slew Processor / Generator
最後はスターターシステムにこのモジュール入れちゃう!?と衝撃が走った、ちょっとマニアックなモジュールです。
最近シンセ界隈で話題になっている「アメリカ西海岸スタイル」のモジュールで、Serge という伝説的なメーカーの VCS というモジュラーシンセが元になっています。
できる事を簡単にまとめると以下のようになります。
- スルー機能(グライド、ポルタメント)
- AR、ASRエンベロープ
- LFO の様な周期的なCVを出力
たった1台でこんなに色々使える超便利モジュールなんですね。いわゆる普通のシンセサイザーに慣れていると最初はこのモジュールの独特な考え方に面食らうかもしれませんが、理解するとこの素晴らしさに関心する事でしょう!
84HP というサイズをフルに使用した機能美
いかがでしたでしょうか?84HPというモジュラーシンセのケースの標準的なサイズぴったりに!機能的に!美しく!モジュールがマウントされているのがこの A-100 SS-1 です。あまりの美しさにうっとりしてしまいますね。文章だけで紹介されてもイマイチ分かりにくかもしれませんが、実際に使ってみるとこの素晴らしさが分かっていただけると思います。
そして使っている内に「こんな事ができたらいいな」「こんな音が作りたい」「こんなパフォーマンスがしてみたい」という欲求が次々と湧いてくると思います。そんな時もモジュールを買い足していって自分だけのオリジナルシステムに仕上げていく事ができるのがモジュラーシンセの大きな魅力です。繰り返しになってしまいますがこの記事のはじめの方でも述べた様に、モジュールを拡張するためのブランクスペースがある大きめのケースのシステムがオススメです。
ちなみに Doepfer にはもう一つ A-100 BS-2 という昔からラインナップシステムもあるのですが、こちらは A-100 SS-1 の2倍のサイズ、84HP x2段分のモジュールで構成されたシステムです。ご興味のある方はぜひこちらもチェックしてみて下さい。
http://fiveg.net/?mode=srh&sort=n&cid=1833850%2C0&keyword=A-100+BS-2
Doepfer A-100 SS-1 シリーズ はこんな方にオススメ!
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