こんにちは、お久しぶりの更新となる Five G Staff Blog です。
今回は話題の新製品、アナログ・モノシンセ Roland SE-02 です。
先日 Roland さんから発売前の SE-02 をお借りしたのでひとしきりいじってみた感想をお伝えしたいと思います。
世界的電子楽器メーカー Roland と知る人ぞ知る老舗アナログシンセメーカー Studio Electronics のコラボにより生まれたアナログ・モノシンセ!
この記事をお読みの方には Roland は説明不要でしょう。
世界に名を轟かせる日本が誇る大手電子楽器メーカー。多種多様な電子楽器を開発し、世界中の多くの方が愛用しています。
気になる Studio Electronics というメーカー名を初めて聞いたという方も多いと思いますのでちょっと説明しましょう。
Studio Electronics はかれこれ30年近い歴史を持つアメリカのシンセサイザーメーカーです。初期の頃は Minimoog や Prophet-5 といったヴィンテージ・アナログシンセの名機の中身を抜き出し、ラックマウント化して MIDI を付けた製品を開発していました。
その後ヴィンテージシンセのコピー基板を使用したオリジナル製品を作る様になり、その圧倒的なクオリティのサウンドで定評を得ます。
近年では様々なシンセを開発する傍ら、ユーロラック・モジュラーシンセ業界にも参入し、それらのノウハウを活かした製品も多数リリースしています。
そんな世界中のコアなシンセ好きから支持を集める「いぶし銀」メーカーと、日本が誇る世界的楽器メーカー Roland がまさかのコラボですよ!
アナログ・モノシンセって何?
SE-02 はアナログ・モノシンセです。アナログ・シンセって何?モノ?って美味しいの?
アナログシンセは簡単に言うと「電気を音に変えて鳴っている」シンセです。みなさんが生活で使う電気が出てくる壁のコンセント、ありますよね。そのコンセントから出ている電気を複雑な電子回路に突っ込んで音楽的な音にして出すのがアナログシンセです。
自然のエネルギー、電気が鳴っているので生々しい音が特長です。そういう点ではギター等と同じ「アコースティック楽器」とも言えるのがアナログシンセです。
モノシンセの「モノ」ですが、「ひとつの」という意味のギリシャ語です。つまり、鍵盤を弾いて1音だけ音が出るシンセです。
1音しか出ねーのかよ!という声も聴こえますが、アナログシンセってのは大変な物で、和音を出そうと思うとその和音の数の分だけ同じ機構が必要になってしまうんです。つまりお値段が単純に2倍3倍くらいになってしまうんですね。
そんじゃモノシンセって何が良いの?どんな用途に使うの?と言いますと、和音が出ない代わりにたった1音が物凄く良い音なんですよね。他のサウンドに埋もれない音、生楽器が中心のバンドサウンドの中でも前に出てくる音です。
他のシンセサイザーと比べて相対的に表現するならば、一点豪華主義ってやつですね。服にはお金あまりかけないけど腕時計はロレックスだぜ!みたいなノリです。
圧倒的存在感の Studio Electronics サウンド!! + 操作性抜群の Boutique シリーズのインターフェース!! = SE-02
気になる音源部分はディスクリートのアナログ回路で構成されており、放たれる音はヴィンテージ・シンセさながらの素晴らしいサウンドです。
とりあえずサウンドを聴いてみて、まさに Studio Electronics の音だ!と思いました。当たり前ですが。素のオシレーターの音一つ聴いただけで他のシンセと違うのが分かります。低い音量なのに良く聴こえる感じ、骨までビリビリ響く様な存在感のある音、まさに「電気が鳴っている!!!」といった特長のある音です。
音源部分は全て Studio Electronics による設計との事で、Roland はほぼ手を出していないとの事です。
今回のコラボで Roland が担当したのはインターフェース回りと筐体部分です。
中規模~小規模メーカーにとってインターフェース回りはなかなか手間ががかかり負担になってしまう部分の様で、どうしても操作系統が分かりづらかったり煮詰めきれていなかったりする事があります。
SE-02 はインターフェース回りを Roland が担当する事でそんな問題を解決!人気の Boutique シリーズから受け継がれた直感的な操作性、システム、シーケンサー、インターフェースを搭載する事で非常に使いやすいのが特長です。
Studio Electronics の自社製品も十分に良くできているのですが、Roland が担当する事により、より分かりやすく簡単に細かな設定ができるようになっています。
MIDI 鍵盤を繋げばすぐに音出しOK!USBで PC/Mac と接続して DAW ソフトで打ち込んだシーケンスでも演奏できます。
CV, Gate, VCF CV 入力も搭載しているので、最近増えてきた CV/Gate を搭載したキーボード、シーケンサー、モジュラーシンセ等からもコントロールできます。音程がクロマチック音階から外れた「ドリフト・シーケンス」も演奏できますね。
Boutique シリーズと同じ筐体なので、Boutique シリーズ専用キーボード K-25m や専用ドック DK-01 も使えます。
SE-02 も Boutique シリーズと同様、本体にスピーカーを搭載しているので、K-25m を接続すればお手軽に鍵盤で演奏できます。
ただし!Boutique シリーズと違い電池駆動には対応していません!使う際は付属の AC アダプターが必須なのでご注意を!
どこかで見た事あるようなパネル構成…そう!あの伝説的モノシンセだ!
シンセ好きな方はすぐに気付かれたかもしれません、3VCO、ミキサー、ADSエンベロープ、そうこのパネル構成は…みんなで、せーの!で言ってみましょうか。
せーの!…
Minimoog(ミニモーグ)!!!!!
そうです Minimoog をお手本にしています。商標の問題などもあるのでしょう、Roland の製品ページには書かれていませんがこのパネルはどこからどう見ても Minimoog ですね。Roland さんが言えないのならウチが言ってしまいましょう。Minimoog!!!
Minimoog といえばシンセサイザーの代名詞と言っても過言ではない伝説的なシンセ!電気のある無人島へ一台だけシンセを持って行くとしたら?というクエスチョンに多くの著名ミュージシャンが Minimoog!!!と答えるほどの存在です。
もともと Studio Electronics は Minimoog から基板を抜き出してラックマウント化した「MIDIMOOG」という製品や MIDIMOOG の抜き出し基板を自社で生産したコピー基板に差し替えた(ロットにより一部例外もあります)「MIDIMINI」、同じく Minimoog をお手本にしたラックマウント型シンセで自社オリジナル設計の「SE-1」というシンセを開発していました。
SE-02 は名前からしてこの SE-1 の後継機種という位置づけかもしれませんね。
そんな Studio Electronics が長年に渡る Minimoog に関するノウハウをこの小さな筐体に凝集したのがこの SE-02 です!
シンプルで奥深い音作りの流れ
シンプルかつ非常に奥深く、スウィートスポットだらけの Minimoog と同様の音作りが SE-02 でも可能です。
ざざっとご紹介しましょう。
6種類の波形から選択出来る3基のオシレーター。それぞれのオシレーターのチューニングを微妙にずらして音に厚みを持たせたり、大幅にずらして5度上の音程を重ねたりもできます。
オシレーターの音量はミキサーでバランスを調整、この時ノイズオシレーターの音を加える事もできます。
ミキサーで混ぜた音はフィルターセクションで音色を作り込みます。切れ味の良い -24dB フィルターはカットオフのツマミを回すと倍音が気持ち良く大胆に変化します。EMPHASIS(他のシンセで言うところのレゾナンス)を上げるとフィルターは自己発振し、オシレーターに用意されていないサイン波を奏でます。
フィルターの KEY TRACK をフルにするとこのサイン波は演奏した鍵盤に追従する様になるので、全てのオシレーターの音量を0にしてこのサイン波を演奏するのも定番のテクニックです。GLIDE をかける事もでき、定番の音色「サイン波リード」を奏でる事もできます!
フィルターとアンプにそれぞれ用意されたエンベロープ用のツマミは ATTACK, DECAY, SUSTAIN の3ステージです。リリースが無いよ!とツッコミたくなりますがご安心。REL というスイッチが用意されており、これを ON にすると DECAY のツマミを使用して DECAY と同じタイムでリリースを設定できるのです!この辺の考え方も Minimoog に近いですね。
Minimoog より拡張されている点も数多くあり、主要な部分をご紹介しましょう。
強烈な音色変化を生む XMOD セクション
まず大きな存在はオシレーターとミキサーの間に搭載されている XMOD セクションです。
この3系統のモジュレーションにより近年流行のダンスミュージックで良く聴かれるギョイー!ブバババババ!ズビャビャビャビャ!といった「お行儀の良くないサウンド」も簡単に作れてしまいます!ミキサーセクションのフィードバックも合わせて使うとより凶暴なサウンドになります。
XMOD の変調元と変調先は以下の通りです。
- オシレーター2 → フィルターカットオフ
- オシレーター3 → オシレーター2のフリーケンシー
- オシレーター3 → オシレーター1と2の Pulse Width
オシレーターから独立した LFO を搭載
SE-02 は LFO を搭載しています。Minimoog は独立したモジュレーション用の LFO を搭載しておらず、オシレーター3をローフリーケンシーモードにして LFO としてモジュレーションソースにして使用していました。せっかく3基搭載しているオシレーターのうちの1つを犠牲にしなければならないというデメリットがありました。(2オシレーターでも素晴らしいサウンドを奏でるのでそれほど大きな問題ではないと言う説もありますが…)SE-02はそんな心配無用で3つのオシレーターをフル活用する事ができます。
ディレイ・エフェクトを搭載
最終出力の直前にディレイ・エフェクトを搭載しています。モノシンセのサウンドに空間的な広がりを加えるため、コンパクトエフェクター等でディレイをかますのは定番ですが、SE-02はテンポ・シンク可能なデジタル・ディレイを最初から搭載しています。デジタル回路はバイパスする事もできるので、アナログ回路のピュアな出音にこだわる方も安心ですね。
Boutique シリーズと同等のシーケンサーを搭載
Boutique シリーズと同等の、直感的に操作出来るステップ・シーケンサーを搭載しています。フレーズを作って演奏する事ができ、さらにフレーズを順番に演奏出来るソング・モードを搭載。リズムマシン等と同期させてライヴするのにも向いています。
SE-02 はこんな方にオススメ
シンセ好きな方
曲やライブで使わなくてもあれこれいじってるだけで楽しい一台!
Minimoog 相当の回路がこの小さな筐体に詰まってる!というだけでも所有欲を満たしてくれます。
お酒のツマミにも良いでしょう。ツマミが多いだけに!(酔ってないですよ)一杯飲みながらシンセをグリグリいじるのも楽しいものです。
DTM 環境にプラス1したい方
どうも最近ソフトシンセが物足りなくて、何か良い音がするハード音源ないっすかぁ?という方にもオススメできます。
SE-02 をベース等で使用すると曲のまとまりがグッと良くなるでしょう。
PC/Mac には USB ケーブル一本で接続でき、しかも SE-02 はオーディオインターフェース機能を内蔵しているので、SE-02 のサウンドを簡単に DAW ソフトへ取り込む事が可能です!
ハード機材派トラックメーカーの方
色んなハードシンセやドラムマシンをシンクさせて曲作りやライブを行うトラックメーカーの方にもオススメですね。
内蔵シーケンサーでフレーズを作って同期演奏できるのは高ポイントです。
SE-02 は近年数多くリリースされているガジェット系シンセよりも数ランク上のリッチな音なので、サウンド面でもきっとご満足いただけると思います。
キーボーディストの方
ライヴでメインに使うのは色々な音色が演奏出来るオールインワンシンセやステージピアノがメイン、サブでソロやリード用にアナログシンセを導入している方も多いと思います。
SE-02 はバンドサウンドにも埋もれない存在感のある音がするので、ライヴのサブ機にオススメです!!!
メインの鍵盤に外部音源を演奏する機能があれば MIDI ケーブルで接続してメインの鍵盤の空いたスペースにちょこんと乗せるだけでセッティング完了です。
片手で持てるサイズと重さなので移動も楽々です。
総括すると、皆さんにオススメのモノシンセ!
最後に一つだけ欲を言うと、大きなツマミでいじってみたい!この辺は設計思想を Boutique シリーズから受け継いだ部分が多いため実現できなかったのだと思います。別途 MIDI コントローラーを用意するか、2倍サイズのパネルを持つコントローラーを自作するしか無いですね。
同じ価格帯の素晴らしいモノシンセも各社より発売中ですが、SE-02 はそれらにも全く引けを取らない、人によっては頭一つ抜きん出てる印象を受ける一台だと思います。
アナログ・モノシンセは、サンプリングによる多彩な音色や100以上もの発音数の、近年のハイテクなシンセと比べると、発音数や音色の面でどうしても「使う人を選ぶ」シンセであるのは確かです。
しかし自分が持っているビジョン、欲しい音がハッキリしているにとっては「使う人が選ぶ」シンセであると言えるのではないかと思います。
動画で見たり、実際に触ってみて、何か感じる物があれば、あなたは「使う人」かもしれません。
Roland SE-02 は2017年7月、発売予定です!
Roland SE-02【7月28日発売!ご予約受付中!】
RolandとStudio Electronicsのコラボレーションによるアナログシンセサイザー