みなさんこんにちは。Five G ミヨサワです。2年と3ヶ月ぶりに Five G のブログを更新します。以前のドメインである fiveg.keyboard.jp から、当店が長年死蔵していた「fiveg.jp」に引っ越して再スタートです。どうぞよろしくお願いします。
ブログ引越し記念、第一弾の記事は、先日発売された Modal Electronics(モーダル・エレクトロニクス)の「COBALT5S」のご紹介です! Modal Electronics はイギリスのシンセサイザーメーカーで、もともとハイエンドな高価格帯のシンセを作っていたのですが、一転してクリエイターシリーズという SKULPT や CRAFTsynth といったガジェットシンセが大ヒット、そして現在はスタンダードな価格帯の ARGON シリーズ と COBALT シリーズをメインに展開しています。
ARGON シリーズ、COBALT シリーズともにスタンダードモデル、61鍵モデル、音源モジュールと、死角のないラインナップでしたが、そこへ突如現れた「小さな青い彗星」とも言える COBALT5S が登場しました!ちょうどこういうのが欲しかったんだよ!という反響が多いこのシンセをご紹介していきます。
とにかく小さい!そして高級感あふれる手触り
COBALT5S の大きな特徴の一つがこのサイズ!とにかく小さくてどこへでも持ち運べる大きさです。しかも USB による電源供給が可能です。と、いうことは PC に直接接続して動作させることはもちろん、モバイル・バッテリー、スマホ用の出力大きめの5V電源アダプターからも電源供給が可能!公園のベンチに座ってヘッドフォンでモニターしながらアイデアを練ったり音作りを楽しんだり、といった使い方ができます。
シンセの顔であるコントロール・パネルは金属製でヘアライン加工がされた、高級感あふれる美しいコバルトブルーのパネルです。ボディはポリカーボネート製でしっかりした作りです。そしてスペックや写真で分からないことですが、底面はスチールの板でできており、ガッシリとした作りです。この底面もポリカーボネートで作ればもっと軽量化できるのではないかと思いますが、底面にある程度の重量がないと演奏中に本体がガタガタとゆれてあらぬ方向へズレていってしまうので、この板は結構重要だったりします。持ち運びやすさと演奏性を兼ね備えた絶妙なバランス!といえるでしょう。
演奏性が高い!
COBALT5S はこのサイズのシンセではよくある、いわゆる「ミニ鍵盤」を搭載していますが、このミニ鍵盤のキータッチと質感が非常に高いです。個人的にはミニ鍵盤で25鍵だとちょっと少なくて不便、49鍵だとちょっと多い、その間の「37鍵」という鍵盤数はちょうど良いです。COBALT5S は DAW の打ち込み用のキーボードとしてもちょうど良いです。
後述しますが、ピッチベンドやモジュレーション、その他任意のソースをアサインできる「タッチパッド」も優れものです。
最新鋭のバーチャル・アナログ・サウンド
COBALT5S は最新鋭のバーチャル・アナログシンセである「COBALT8 シリーズ」と同等のサウンド・エンジンを搭載しています。違いはボイス数のみ、用意されている波形やフィルターのスペックはほぼ同じです。
もともとバーチャル・アナログシンセは「アナログシンセをデジタルで再現したシンセ」なのですが、1990年代に登場して以来、独自の進化を遂げで「バーチャル・アナログシンセ」という一つのジャンルとして確立しました。COBALT エンジンのシンセは一昔前のバーチャル・アナログシンセから大きな進化を遂げており、非常に解像度が高く、輪郭がクッキリとしたクリアなサウンドが特徴です。昔からのシンセ好きの方は、バーチャル・アナログシンセといえば90年代の機種のサウンドのイメージが強いかもしれませんが、COBALT シリーズを触ると、そのサウンドに驚くのではないかと思います。
まずオシレーターのアルゴリズムが凄いです。昔ながらのバーチャル・アナログ、PWM、スプレッド、ハードシンク、リング・モジュレーション、ウェーブフォールドをはじめ、ここでは説明しきれないカオスなアルゴリズムを含めてその数は40種類!AとB、2つのパラメーターをいじるだけで波形がダイナミックに変化して物凄い強烈なサウンドの変化をします。しかも!その波形が本体のディスプレイにリアルタイムで表示されるのが最高に楽しいです。オシレーターをいじるだけでもあっという間に時間が過ぎてしまいますねぇ。。。
フィルター切れ味鋭い4ポールのラダーフィルター。しかもモーフィング可能なのでフリーケンシー特性をリアルタイムで変化させられます。LFOやエンベロープでモーフィングさせると大変楽しいです。
その他にもアルペジエーターとシーケンサー、コーラスとステレオディレイの2系統のエフェクトも楽しいのですがスペースの都合上、割愛させていただきます。。。
COBALT5S vs COBALT8 シリーズ、どっちが良い?
COBALT5S の兄貴分である COBALT8 シリーズ。5S と比べてみると実際のところどうなんでしょうか?
持ち運びのしやすさと設置面積
COBALT8 スタンダードモデルと比べると、これは火を見るよりも明らかで COBALT5S が圧勝!重量は COBALT8 の半分以下でたったの2.4Kg。持ってみた際の存在感や体積の差は歴然としています。
しかしサイズと重量で比べると COBALT8M は2.1Kgで設置面積もこちらの方がコンパクト。他にマスターキーボードを使用していて音源だけ欲しい!という方には COBALT8M がオススメです。ノブやボタンも多いですし、エディットは 8M の方がしやすいですね。
演奏性
キーボードのピッチと鍵盤数の多さで比べると、もちろん COBALT8 と COBALT8X が圧勝です。
しかし、COBALT5S のキーボードも負けてはおらず、このサイズのミニ鍵盤にしては安っぽさは無く、キータッチの質感も大変良いです。持ち運びのしやすいサイズでこのキーボードはなかなか強力ですね。ライブのサブキーボードとしても威力を発揮してくれます!
そしてコントローラーで地味に違いがあります。COBALT8 シリーズは4軸のジョイスティック(X+, X-, Y+, Y-)で、ジョイスティックを上下左右に倒して任意のパラメーターをコントロールできます。それに対し COBALT5S はジョイスティックではなく、指でタッチしてコントロールする「タッチパッド」を搭載しています。このタッチパッドは5軸(X+, X-, Y+, Y-, Z)と、ジョイスティックに比べて1軸多いんですね。この増えた1軸というのが「Z = 圧力」なんです!タッチパッドに指を乗せて上下左右に動かすのに加えて、チッチパッドを「押し込む」ことでZ軸のモジュレーションを生成して、任意のパラメーターをコントロールできます。これは8シリーズにはない 5S のアドバンテージです。しかもこのタッチパッドの動作を細かく指定でき、中央を0として絶対値でコントロールするか、タッチした場所を0として相対値でコントロールするかを選べるんです。演奏スタイルによって任意に変更できるのは、演奏者に寄り添った親切設計ですねぇ。
サウンド・エンジン
COBALT5S は5ボイス、COBALT8 シリーズは8ボイスと3ボイスの差があるので、3ボイス分 COBALT8 シリーズの方が優れていると言えます。この3ボイスの差をどう捉えるかは、使用する方によると思います。某SEQUENTIAL 社の伝説的なあのシンセは5ボイスです。右手でコードを4和音 + 左手でベース1音押さえてちょうど5ボイス。そこから次のコードとベースを押さえた際にちょうど前の音が切れるので余計なサウンドを引きずりません。5ボイスって実はちょうど良いボイス数だよねー、という考え方もできると思います。
ボイス数以外のサウンド・エンジンは同じです。そう考えると 5S のコスパはなかなか高いと言えるのではないでしょうか。
コンピューターやタブレットで動作する専用エディター「MODALapp」で快適エディット
Modal シンセに共通の素晴らしい点はこの「MODALapp」があることです。MODALapp は Modal シンセ専用のエディター&ライブラリアン・ソフトで macOS、Windows、iOS、iPadOS、Android 用のスタンドアローン・アプリです。また VST3/AU プラグイン版の「MODALplugin」は DAW 上で使用することもできます。ハードシンセとこのソフトを USB ケーブルで接続して連動させることで、Modal シンセをより快適に使用することができます。なお、DAW で Modal シンセのサウンドを録音する場合、オーディオ信号は別途オーディオインターフェースを使用して DAW へ入力する必要があります。
他のシンセメーカーも、一部で専用のエディターが用意されていたり、またサードパーティ・メーカーや個人開発のエディターなんかもあります。しかし!MODALapp の出来の良さは頭ひとつ抜け出て出来が良いんです!シンセ側のノブやスイッチを操作するとエディターの画面が吸い付くように素早く反応、逆にエディターを操作するとシンセ側も吸い付くように反応。エディターソフトというとなんとなく反応が遅かったり、操作感がイマイチで結局使わなくなってしまったりしますが、MODALapp はまさに「人馬一体」といった感覚で操作できます。
シンセだけでもすべてエディットできるように完成されたインターフェースを持っている Modal シンセですが、エディターを使いだすともうコレ無しにはエディットできない!と思うくらい快適です。
サウンド・ライブラリの管理も非常に直感的に操作できて快適です。スタジオで作り溜めたとっておきのパッチをシンセに流し込んで、ライヴで大活躍!といった使い方ができます。
MODALapp は COBALT5S に限らず、COBALT8 シリーズ、ARGON8 シリーズなどでも使用できます。
COBALT5S はこんな方にオススメ
いかがでしたか? COBALT5S の良さが少しでもお伝えできたら嬉しいです。この記事を読んでやっぱり COBALT8 のが良い! COBALT8X のが自分には向いてる! COBALT8M 便利だよねーと思っていただけたらそれもまた嬉しいです。
Modal Electronics には ARGON8 シリーズという、こちらも最新鋭のウェーブテーブル・シンセがラインナップされていますので、ぜひこちらもチェックしてみてください!