今回ご紹介するモジュールはデジタル・オシレーター・モジュール Mutable Instrumentsの「Braids(ブレイズ)」です。
- WIDTH : 16 HP
- DEPTH : 20 mm
- 消費電流 : 100 mA +12V, 15 mA -12V
Mutable Instruments はフランスの電子楽器メーカーです。以前は自作キットの単体シンセサイザーなどもリリースしていましたが、ここ数年の製品はほとんどユーロラック・モジュールで、モジュラーシンセメーカーとしてすっかり定着した印象があります。モジュラーシンセというと数年前までアナログなイメージが強かったですが、Mutable Instruments のモジュールはそのほとんどがデジタルを活かしたモジュールです。アナログでは難しいアイデアをデジタルを利用して上手くモジュラーシンセに取り込んでいるのが大きな特長です。ユーロラック・モジュール界では非常に人気が高く、Five G でもこの Braids をはじめ、Mutable Instruments のモジュールはとてもよく売れています。
さてこの Braids はデジタルであるメリットを利用して、なんと40種類以上のオシレーターモデルを搭載しているんです!他のオシレーターモジュールより少々お値段が張りますが、お値段以上、八面六臂な活躍をしてくれるでしょう。以前 Rittor Music 刊 Sound & Recording Magazine のモジュラーシンセ特集の中で「モジュラーアーティストが選ぶ初心者にオススメのモジュール」というようなコーナーがあったのですが、そこに出演した3組のアーティスト全員がこの Braids を勧めていたんですねぇ!出せる音色のバリエーションと、そのコストパフォーマンスの高さが評価されての選出ではないかと思います。
今回は「YAMAHA CS-80タイプのノコギリ波」から「通信システムのノイズ」(!?!?)という超変わり種まで、この記事執筆時(2016年5月)の最新システムである、ファームウェア・バージョンv1.8時点で搭載されているオシレーターモデルを一挙にご紹介したいと思います。
クラシック・アナログ・ウェーブフォーム
デジタル・オシレーターでもまず基本となるのがクラシックなアナログ波形。もちろんアナログではないのでバーチャル・アナログシンセの様なサウンドです。というかバーチャルアナログですね。
- CS-80タイプ ノコギリ波
- 可変ウェーブフォーム
- 可変ウェーブフォーム(PWM)
- オシレーターシンク(矩形波)
- オシレーターシンク(ノコギリ波)
- サイン波 / 三角波 + ウェーブフォルダー
デジタル・シンセシス
波形を3つ同時に出力して音程のインターバルを設定し5thやユニゾンを簡単に演奏できる x3、いわゆる Super Saw な7デチューンド・ノコギリ波、ぶっ壊れたような電子おもちゃのサウンドが出るサーキットベント・トイ、デジタルシンセの名機CASIO CZ を模したオシレーター + フィルターなど粒ぞろいです。
- サイン波 + ディラックコム
- ノコギリ波 x3
- 矩形波 x3
- 三角波 x3
- サイン波 x3
- リングモジュレーター
- 7デチューンド・ノコギリ波
- ノコギリ波 + コムフィルター
- サーキットベント・トイ
- CZオシレーター + ローパス・フィルター
- CZオシレーター + ピーキング・フィルター
- CZオシレーター + バンドパス・フィルター
- CZオシレーター + ハイパス・フィルター
ボーカル・シンセシス / フォルマント・シンセシス
「アアアアイイイエエエエオオエエエエエ」といった感じの声のようなサウンドが得られます。少々難しいですが、上手いこと外部CVをプログラムしてコントロールすれば、歌わせる事もできます!
- VOSIM シンセシス
- VOWL / FOF シンセシス
倍音加算 / FMシンセシス
12系統のサイン波を重ねる倍音加算シンセシス、FMシンセとしてはベーシックな、フィードバックも用意された2オペFM。
物理モデリング・シンセシス
ベル、ドラム、弦楽器、木管楽器などのモデリングと TR-808 のエミュレート。物理モデリングというとデジタルなイメージですが、808 もよく考えたら「アナログ回路で生楽器の鳴り方を再現」した電子楽器なのでこのカテゴリーなんですね。このカテゴリーは発音させるために外部モジュールからトリガー信号を入力する必要があります。
- ベル
- ドラム
- 808キック
- シンバルオシレーター
- 808スネア
- プラック・ストリング・モデリング・シンセシス
- ボウ・ストリング・モデリング・シンセシス
- 木管モデリング・シンセシス
- フルート・ストリング・モデリング・シンセシス
ウェーブテーブル・シンセシス
Waldorfのシンセでおなじみのシンセ好き御用達、ウェーブテーブル・シンセシス。
- ウェーブテーブル・シンセシス
- 16×16マップ・ウェーブテーブル・シンセシス
- リニア・ウェーブテーブル・スキャニング・シンセシス
- クアッド・ウェーブテーブル・シンセシス
ノイズ
ただの「ザー」や「ゴー」といったサウンドだけではない、バリエーションに富んだノイズを作成できます。
- チューンドノイズ(+2Poleフィルター)
- ノイズ + 2 x レゾネーター
- クロックド・デジタルノイズ
- グラニュラー・シンセシス(サイン波)
- グラニュラー・シンセシス(PING)
- モデムノイズ
いかがでしょうか?たった1台でこれほど多くのバリエーションのサウンドを出す事ができます。
Braids が発売された2014年当初、オシレーターモデルは30数種類ほどでしたが、v1.8ではいつの間にか44種類にまで増えています!
こうやってモジュールがリリースされた後に、ファームウェアのアップデートで機能が追加されるのもデジタルモジュールのメリットですね。
Mutable Instruments Braids はこんな方にオススメ
- モジュラーシンセ初心者の方
- オシレーターのバリエーションを一気に増やしたい方
- アナログ、デジタル関わらず色々なシンセサイザーが大好きだ!という方
2018年、Braidsは生産終了になりました。精神的な後継機種 Plaits が発売中です。
Mutable Instruments Plaits | ユーロラック・モジュラーシンセ | Five G music technology